【赤い花シリーズ②】翅人の伝統的な暮らし
前回の記事はこちら。
第二回の今回は、作中にたびたび登場する翅人という種族の暮らしの設定について書いていきます。
『AMARYLLIS』では胡散臭い登場人物、あるいは味方の聖戦士としてちょっとだけ登場する程度ですが、『花売り狩りのロザリー』では彼らの住まいが舞台の殆どとなっています。
翅人たちは「赤い花」の世界で妖精に分類される種族で、寿命は大変長いのですが、力はとても弱々しい種族です。外敵はとても多く、とくに女性や子どもは他の種族の獲物として略取の対象とされ、時には共食いの被害に遭うこともあり、大半はその長い寿命をまっとうできずに亡くなってしまいます。
なので、翅人たちが基本的に信頼しているのは同じ母系で繋がっている血族だけで、地底や洞穴などに隠れ家を作って暮らしています。
成長した男性翅人たちはそこから飛び出して、力を知恵などでカバーして情報屋や花売りなどの危険な仕事に従事し、実家で隠れ住む姉妹や母親、おばや祖母、老いたおじ達、そしてまだまだ幼い甥っ子や姪っ子などのために命懸けで稼いできます。
一方、女性翅人たちは一生家から出してはもらえず子守や家事に専念します。
また、花売りの家系である場合は、男性親族が捕らえてきた〈赤い花〉の魔女たちや彼女たちの産んだ子どもたちの身の回りの世話を引き受けることもあります。
そのため、基本的に自由はなく、外の機会を知ることは殆どありませんが、年に数回の翅人たちの祭りのときだけは美しく着飾り、男性親族に連れられて秘密の会場へと赴きます。
この時期は翅人たちの繁殖期であり、そこで一夜だけのロマンスを経験してから女性翅人たちは家に戻って新しい卵を産みます。
この祭りの時期を狙って卵を抱えた女性翅人を攫う捕食者がいたり、人知れず共食いを楽しもうとする不届き者もいて、命懸けです。
こういった暮らしをしているので、他種族の者たちが見かける翅人は、その殆どが男性です。また、実の父親を知らない翅人が大半で、卵から孵った子どもたちはおじ達を父親のように慕いながら育ちます。
しかし、翅人の中にはこうした伝統的な暮らしを嫌い、家出をしてリリウム教会などの他のコミュニティに属する者もいます。『AMARYLLIS』や『花売り狩りのロザリー』に登場する翅人戦士たちはそういった経緯をもつ人々です。
0コメント