第2回 バッファローという最大のギフト~『血の塊‐南ウート族』

前回に続き、血の塊から超人的な男の子が誕生するというお話。

しかし、ここで重視されているのはウサギではなくバッファローです。それだけ、南ウート族の人々にとって、バッファローが重要な存在だったことがうかがえます。


その内容は、バッファローの足跡の先にあった血の塊から生まれた青年が、超人的な狩りの腕で両親や村の人間たちの助けとなるものの、青年の妻があるルールを破ってしまったために人々のもとから去ってしまうというもの。

こういったお話は日本昔話でもお馴染みですよね。『鶴の恩返し』がもっとも有名なので、女性のイメージがありますが、ここでは男女が逆です。

また、見るなのタブーというと、旧約聖書やギリシャ神話、イザナギとイザナミの伝説など、世界的にもたくさんあって、一体どうしてこういう共通点が生まれるのかと人間の想像力に対して不思議さを感じたりもします。


私が書いているお話は出来る限り綺麗に着地させたいという思いもあるため、「○○してはならない」をうっかり破ったために取り返しがつかなくなるというお話はあまり書かないのですが、そうであっても物語の展開上や導入にもってくるパターンとしてなら、いい感じに作用してくれそうと思ったりもしました。


◆今回のメモ

・血の塊

バッファローの足跡の先にあった血の塊から生まれた男の子。狩りの天才で、物語の中で生活の為にあらゆる生き物を仕留めまくる。とくに最大の贈り物となるのがバッファローの死体。しかし、妻のうっかりミスで彼自身もバッファローに戻ってしまった。


追記。

バッファローといえば、こちらの書籍を思い出しました。

タロットカードのような占い道具の一種なのですが、その解説書にそれぞれのメディスン(動物たち)にまつわる神話や伝説が簡単に紹介され、彼らの持つ意味も解説されているので、読み物としてなかなか面白かったので、この備忘録シリーズでもたびたび話題に出すと思います。

ところで、この中で登場するバッファローは「豊穣」を意味しており、その毛皮や肉がどれだけアメリカ先住民の人々の生活を支えてきたのかが読み取れました。


食べられることこそが彼らが尊ばれる理由でもあるようなので、だからこそ、自分自身もまたバッファローだと自覚している青年の最大の贈り物が仲間でもあるバッファローたちだったのでしょうね。

現代の日本人である私としては共感できるわけではないのですが、この精神について知っておくのも悪くないように感じました。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)