第14回 積年の恨みと誇りを感じるお話『よく焼けた人間‐ピマ族』

アメリカ建国の歴史について書かれた資料を読み漁っていると、避けて通れないのがヨーロッパ人たちによるアメリカ先住民たちへの仕打ちの記録です。

長らく英雄として語られてきた冒険家や革命家たちも、今の価値観で見れば恐ろしいまでの差別的思想で新天地を支配していったことが分かり、人間の恐ろしさを感じるものでした。


そんな長年の不満は当然たまるもので、白人たちがアメリカ先住民たちを差別するように、アメリカ先住民たちもまた白人たちを白い目で見てきたのだなと分かるお話もあるようです。

今回はそんなお話でした。

ピマ族の語るこのお話によれば、人間を創ったのは〈魔術師〉であり、粘土で自分に似た姿の人形を象ると、かまどで焼いて完成させようとしたそうです。

しかし、そこへやってきたのが悪戯好きのコヨーテで、何度も〈魔術師〉の邪魔をして、失敗させてしまいました。

そうして誕生したのが犬、白人、黒人であり、最後に綺麗な具合に焼けて完成したのが、この大地に暮らす人々だったという内容でした。


犬たちがアメリカ先住民にとって貴重な労働力だったことは知っています。

犬の進化は人々の歴史と切っても切り離せないもので、それだけにアメリカ先住民の儀式のなかには犬に関する恐ろしい生贄の儀式もあるくらいなのです。

人を作る過程で犬が誕生するのも、そういった理由があってのことなのでしょうね。


ちなみに、生焼けだったのが白人で、焼きすぎてしまったのが黒人です。


アメリカの黒人は、冒険家たちによって奴隷として”輸入”という形でやってきているのですが、アメリカの参政権の歴史をみると、白人男性→黒人男性→女性→アメリカ先住民という順番となっており、それだけ差別意識も強かったことが理解できました。

黒人差別の歴史も酷いものだと感じますが、アメリカ先住民にとってみれば、黒人もまた外から来た人々であり、あまりよく思っていなかったのかもしれません。


それはともかく、本によれば、白人たちが神様の失敗や気まぐれで誕生したというお話は他にもたくさんあるらしく、住処を奪い、生態系を乱し、未知の病気をもたらした移民たちへの静かな怒りを感じました。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)