第8回 生活スタイルの変化を感じる話~『泉の老女‐シャイアン族』
トウモロコシやバッファローがアメリカ先住民にとってどれだけ重要だったかは、これまで読んできた話でも伝わってきましたが、この話もまたトウモロコシの存在やバッファロー狩りにまつわる話でした。
解説も合わせると、シャイアン族の生活スタイルの変化や変動がそれとなく伝わってきて、なかなか面白かったです。
解説によれば、シャイアン族は他部族との争いに負けてアメリカの北中部から追いやられてしまった歴史があるそうです。
そのためか、シャイアン族の語るお話は「北にいた頃」で始まることも多いようです。追いやられるくらいですから、狩場としても魅力的な土地だったのかもしれませんね。
ちなみにこのお話は、シャイアン族の二人の若者が、泉の洞穴にいた不思議な老女からトウモロコシの栽培を教わり、バッファローたちを呼び戻す儀式を教わり、飢餓から救われるという内容です。
その儀式の手順も興味深くはあったのですが、もっとも印象深かったのは、トウモロコシが盗まれて再び栽培をするのに時間がかかるというお話ですね。
あと、ついでに言えば、これらを伝えた老女が何者なのかというのも気になるところです。
話の終わりの注釈には、トウモロコシが盗まれてしまいという話は文字通り盗まれたのではなく、銃や馬の到来もあってバッファロー狩りが主流になった期間に、トウモロコシ栽培が滞ったことと関係があるそうです。
このように語り継がれるお話の中に昔の人々の暮らしや出来事が含まれているというのは、現代のブログやTwitterのような俗世間的な印象があって、とてもワクワクします。
◆今回のメモ
・泉の老女
シャイアン族にトウモロコシ栽培やバッファローを与える。何者かは不明。
『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)
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