第9回 儀式の起源を説明するお話~『矢の少年‐シャイアン族』

今回もシャイアン族のお話です。

前回の注釈によれば、シャイアン族は語り継がれたお話に続く形で別の話をしていたようで、このお話の導入も、トウモロコシを授かった後…と続きます。

ただ、内容自体はさほど前回と繋がっているような印象はありませんでした。

このお話の主人公は、またしても不思議な力を持つ少年です。

生まれもやっぱり特殊で、母親の胎内に4年間もいたことがあっさりと語られています。しかし、早くに両親を亡くしてしまい、祖母に育てられるという悲しみも背負っています。

なかなかシュールな力を発揮したりするのですが、バッファロー狩りを巡って部族の首長とトラブルになり、殺してしまったことで命を狙われる羽目に。


その後、村に呪いをかけて別の部族のもとで修行し、魔法の矢を授かって故郷に戻ってきます。故郷は少年が去り際に使った力で飢餓に苦しんでいたのですが、それを詫びる形で少年は故郷の人々のために不思議な力を使い、バッファローたちをたくさん呼び寄せるというお話でした。

魔法の矢をどう使うのかは分からないのですが、そのお陰でシャイアン族は飢えることなく暮らせるようになったと結ばれていました。


この魔法の矢はいまでも存在するらしく、南シャイアン族が管理していると書かれていました。また、作中で少年の行った儀式も、スー族がおこなうユイピの儀式でおこなわれているそうです。

つまりは儀式の起点を後世の人々に説明していくお話でもあるわけですね。これもまた昔話っぽくてグッときました。

ちなみにシャイアン族は、スー族と敵対関係にあったそうですが、後に北シャイアン族はスー族と同盟を組んでいるようです。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)