第10回 神聖な踊りに関する不思議~『偉大なるメディスン・ダンス‐シャイアン族』
今回はアメリカ先住民たちの継承してきたダンスにまつわるお話でした。
思えばダンスというものは、古来よりあらゆる民族や文化のなかでコミュニケーションや儀式の手段として発展しているのがちょっと不思議ですよね。
言葉や文字と同じく、踊りもまた人々の生活にとって重要な存在であり続けたと考えると、日本でも行われるあらゆるお祭りや伝統的な踊りにも、親しみがわいてきます。
具体的な内容が始まる前に、サン・ダンス(太陽の踊り)についての解説もありました。
これはスー族の名称で、シャイアン族はニューライフ・ロッジ(新しい生命の小屋)と呼んだようです。
その名の通り、小屋が出てきますし、生命が溢れる悦びや尊びを感じる内容でした。
また、ちょっと面白いなと個人的に思ったのは、首長の妻を若きメディスンマン(祈祷師みたいな存在)が選んで連れて行っちゃうところです。
人々を飢餓から救う神聖な儀式という理由もあってか、不倫や略奪には当たらないらしく、結局儀式が終わった後はそのままメディスンマンの妻になっているあたりがTHE異文化って感じでした。
ちなみに、サン・ダンスの際は踊りが終わるまで男性は女性と関係をもたないという習慣があるらしく、このお話はその由来でもあるそうです。
人々だけではなく、バッファローや鹿などの繁栄を祈る神聖な踊りであるらしく、古来の日本の豊穣祈願の祭りを彷彿とさせます。
ところで、初っ端から出てくるツィスツィスタスって何だろうって思ったのですが、アパッチやナバホにおけるディネのようなもので、シャイアン族自身の呼び方のようです。ディネと同じく「人々」や「我ら同胞」を意味するようです。
◆今回のメモ
・若きメディスンマン
〈立ち上がる角〉という名前がのちにつく。儀式のためとはいえ、大首長の妻を選ぶとても勇気ある青年。
・美しい女性
メディスンマンに選ばれた女性。大首長の妻であったが儀式の為に旅に同行するも、途中でなんで私ここにいるんだろう的な気持ちになっているのがちょっと不憫。のちに青年と結ばれる。
・創造主マヘオ
ふたりにダンスを授ける。〈大きく轟く雷鳴〉という助手がいる。
『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)
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