第12回 ナバホにおけるアダムとイブはトウモロコシから生まれた『最初の男と最初の女の創造‐ナバホ族』
最初の男と最初の女といえば、世界的に連想されるのがアダムとイブだと思います。
北欧神話にもアスクとエムブラっていうのがいて、アダム(A)とイブ(E)とちょうど頭文字が一緒なのですが、偶然と考えられているそうです。
それはいいとして、ナバホの神話にもアダムとイブのような最初の男女がいるようで、彼らはトウモロコシから誕生していました。それだけ、トウモロコシが身近な存在だったことが分かりますね。
物語は人々が暮らしていた大地に四柱の神々がやってくるところから始まります。
神々は身振り手振りで人々に何かを伝えようとするのですが、人々には伝わらず、何日も粘るも三柱は諦めて帰っていってしまいました。
ただ、火の神である〈黒い体〉だけは留まり、彼らの言葉で伝えたかったことを述べたそうです。
いや、喋れるんかーいっていうツッコミはおいといて。
神々は自分たちにより近い姿の新しい人間を作りたいと思っていて、人々に協力してもらおうとしていたそうです。
そのためにまたやってくるから、それまでに身体を清めておきなさいと言い残して去っていくのですが、この際の忠告が単なる悪口でシュールでした。
まあ実際、身体って洗わないと臭いし汚いけれどね。
その後、人々は慌てて粗挽きトウモロコシで身体を清めるのですが、この際、女は黄色、男は白のトウモロコシで清めています。
このカラーもまた重要な要素のようですね。
それから神々は予告通りに現れ、なんやかんやあってトウモロコシの穂から最初の男女が無事に誕生し、地上を繁栄させていくという内容でした。
個人的に面白かったのはやっぱりトウモロコシから誕生している点と、古来の人々が別にいるというところですね。
それと、風が最後に命を吹き込むという一節がなかなかファンタジックで良かったです。
黄色と白っていうのはどういう意味があったんだろうなとも感じました。卵の黄身が黄色いから女性は黄色とか??
ともあれ、古来の人々がその後どうなったのかなど、不思議なまま終わる話でもあるのですが、人類起源にまつわるお話の中では、なかなか分かりやすくて面白かったです。
◆今回のメモ
・四つの神々
〈白い体〉〈青い体〉〈黄色い体〉〈黒い体〉の4柱が登場する。身振り手振りで伝えようとして伝わらなくて諦めちゃうところがちょっと可愛い。火の神である〈黒い体〉だけが人々の言葉を使って教えてくれる。
・〈蜃気楼人間〉
儀式の途中で風と共にやってくる神々。男と女がいるらしく、後に誕生する新しい人間の子孫たちとも結ばれる。
・人々
新しい人間の前から暮らしていた人々。人間に近いが獣や昆虫の身体も持っている。〈黒い体〉に汚くて臭いとか言われるが、言いつけ通り健気に体を清める純朴さがある。
『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)
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