『世界史劇場 アメリカ合衆国の誕生』神野正史(2013 ベレ出版)

日本に暮らしていてアメリカという国を知らないという人は皆無でしょうが、アメリカがどのような歴史をたどって国となったのかを詳しく知る人は、ひょっとしたらそこまで多くないかもしれません。

世界史を選択していても、アメリカ史の詳細を学ぶ機会というのは限られていますし、ざっくりとしか知る機会はありません。

そんな人にとって、植民地化から憲法が誕生するまでの流れをかいつまんで把握できるのがこの書籍でした。

予備校の講師が執筆されているだけあって、非常に分かりやすく、頭に入りやすいというのが正直な感想です。

図を使った解説は、私の特性に合わなかったのか逆に分かりづらかったのですが、文章はとても理解しやすかったので、だいたい何があったかが簡単に理解できました。


ただし、前書きにもあるように、この本は歴史を深々と斬り込んでいくタイプのものであり、それだけならばまだしも、著者の先生の価値観が読み進めていくうちに露骨になっていくため、向き不向きが分かれそうです。

冒険家たちがやったことはどの資料を見ても許されざることですが、少々、斜めに捉えすぎているといいますか、白人差別や宗教差別ともいえる記述が多く、平たく言えば情報に付加された雑音が多いというデメリットを感じました。


共感型の人も、共感できない場合は読んでいて不快になるかもしれませんし、分析型の人も、分析する上で著者の主観的記述が煩わしくなるかもしれません。

けれど、先程も言った通り、読みやすく分かりやすいことは確かなので、本の記述を鵜呑みにしない人にはオススメできます。

また、他の方が書かれているアメリカ史の解説を読む前の、入門としてもいいかもしれないと感じました。

『世界史劇場 アメリカ合衆国の誕生』(神野正史 2013 ベレ出版)