第18回 煙草を人々に広めるという話『聖なる草‐ブラックフット族』

現代でこそその有害さが啓蒙され、分煙や禁煙の流れが強まっていますが、アメリカ先住民たちにとってタバコというものは嗜好品ではなく聖なるものでした。

私なんかは子どもの頃より喘息なのでタバコの煙が強いのは困るのですが、タバコを巡るひとびとの動きや信仰などは興味深いものがあります。


このお話では、四人の不思議な力を持った兄弟たちが独占していたタバコを〈孤高の牡牛〉という一人の男がどうにかして他の人々にも広めるという内容が語られていました。

話によれば、タバコをわけてくれたのはビーバーであったとのことです。


なんで数ある動物たちの中でもビーバーだったのだろうってちょっと不思議でした。

ただ、ビーバーたちが歌って踊りながら煙草を吸っているという光景はイメージするとなかなかディズニーチックで可愛いらしいです。


それはそうと、〈孤高の牡牛〉の話を聞いたビーバーたちが、彼に賛同する際に「皆で分け合うべきだ」と言う部分が印象的でした。

アメリカ先住民たちは、恵みや良いものを独り占めしてはならないという価値観を大事にしていたそうです。

ここは、現代の道徳教育でも語られる部分だと思うのですが、人間が人間同士助け合って暮らすうえでとても大事な価値観だったのかもしれませんね。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)