第22回 あらゆる何故何故にいっぺんに対して答えるお話『ヒカリア族の起源‐ヒカリア・アパッチ族』

第2部全体の前書きで触れられていましたが、最初にあったのは水だったという考えはアメリカ先住民の多くの部族で共通しているそうです。

前回のユマ族の話も、今回のヒカリア族の話もそれは同じなのですが、その後の展開が全く違うのがやっぱり面白いですね。


このお話の面白い所は、バッファロー(アメリカバイソン)の角はどうして曲がっているの?とか、カラスはどうして黒いの?とか、幼い子どもたちが抱きそうな疑問に対して次々と答えているという点でした。


中でも興味深いと思ったのが、少年の成長期に関する疑問と回答でした。

その内容は、山が出来た経緯と繋がっていて、小丘がぐんぐん成長した結果、山になったというもので、けれど、ある日ふたりの女の子が山に入り、木の実や髪飾りになる花を探しにきたところ、山が成長をやめてしまったという不思議なものです。

人々はすぐに少女たちを連れ戻すのですが、山は再び成長することがなかったということなのですが、これが何故か少年の成長に結びつけられています。


いわく、少年が初めて少女と付き合う頃に身長が伸びなくなる理由でもあるのだと。

ちなみに少女と付き合うことがなければ伸び続けるかも知れないという事だったので、ヒカリア族は年頃になると必ずパートナーが出来ていたのかもしれませんね。

男子の成長期と考えると、だいたい十代の後半くらいでしょうか。今でも初めて交際が始まるころを考えるとだいたいが高校生とかかなってイメージだし(ませた子は小学生かもしれないけどw)、そう思うと妥当ですね。


その他も、色々なことが起こった果てにヒカリア族の住まいが決まるところで終わるのですが、先述したようにその間に語られる内容は、幼い子どもが不思議に思いそうなことに関する答えのようなものでした。

分からないものは分からないけれど、人は知りたがる生き物でもある。その知的探求心を手っ取り早く満たせるのが、こういったお話なのかなって思いました。

とくに小さい子なんかは親に何でもかんでも質問しますからね。私も覚えがあります。そういう時に、説明するのにちょうどよかったのかも……なんて思いました。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)