第23回 つまり灰色熊は人々の先祖?『灰色熊が立って歩いた頃‐モドック族』

前回、前々回は水から始まる創世のお話でした。

しかし、今回はちょっと違います。また、ユマ族のお話も、ヒカリア族のお話も、何処か自分たちの部族を特別視している感じが伝わってきたのですが、今回のお話はちょっと違いました。


作中で登場するシャスタ山はカリフォルニア州の北部に存在します。

山の名前はそこに暮らしていたシャスタ族に由来するとのことで、パワースポットとしても紹介されているようです。


このお話ではシャスタ山が出来た経緯として、〈空の精霊〉が地上に降りるために生み出した塚だとしています。

そして、地上に降りてきた〈空の精霊〉は次々に生き物たちを生み出し、その中でももっとも大きかったのが灰色熊……グリズリーだったわけですね。

グリズリーたちは最初の頃、クマの見た目ではあったけれど人間のように暮らしていたとのこと。

この辺りの設定、いいですね。この資料を読んでいる理由である『Berry』という自作小説に良いインスピレーションが生まれそう。舞台も私が薄っすらとイメージしている地域の一つのカリフォルニアだし。シャスタ山も作中に出てくる雪山とイメージが近いし。


さて、それはいいとして、〈空の精霊〉が地上に降りたあと、好奇心からくる事故で〈空の精霊〉の末娘が遠くへ飛ばされていってしまい、灰色熊に発見されます。

家族の為に獲物を狩りに来ていたのですが、彼は精霊の娘を妻子の待つ家に連れ帰ると、息子と一緒に育て始めました。

その後、成長した娘はクマの息子と結婚し、子どもたちが誕生しました。その子たちはクマでもなければ、精霊でもない姿をしていて、灰色熊たたちはこの子どもたちの為に家を作ってあげたそうです。


けれど、しばらく経って、老いたクマの祖母は勝手に精霊の娘を嫁に貰ったことを恐れるようになり、クマたちで会議をして〈空の精霊〉に娘の居場所を伝えることにしました。

報せを聞いた父親は喜んで駆けつけましたが、娘はもう成長した大人の女性になっているうえに、得体の知れない生き物たちが自分の孫として誕生しているという事実に激怒し、灰色熊たちに罰を与えると、娘だけを連れて去っていってしまったそうです。


この罰によって、灰色熊たちは立って歩くことが出来なくなり、言葉も話せなくなってしまったという何とも気の毒なお話。

ちなみに残された孫たちこそが全てのインディアンの祖先であり、そのためにシャスタ山の近くで暮らすインディアンは灰色熊を決して殺さないと決めているというお話でした。


つまり、これを語っていたモドック族にとって、灰色熊という生き物たちは自分たちの父祖であるということですね。

灰色熊と精霊が交わり人間が生まれる……めちゃくちゃ好みなお話です。

というか、私が現在書いている『Berry』のイメージにもピッタリです。何となく読み進めていたのですが、いいお話に出会えて嬉しい。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)