『Berry』創作日記❷~名前等のモデルについて

『Berry』(「小説家になろう」のサイトに飛びます)


間が空きましたが、ふと思い立ったので書き残しておこうと思います。

ドラゴンメイドのモデルはアメリカなのですが、実際のアメリカの歴史を隅々まで把握しているわけでもなく、どんなに資料を読んでも、日本人として生まれ育っている以上、ある程度のバイアスは絶対にかかっていると思います。

なので、実際の国や人への誤解などにつながらないように、あくまでも架空の国である意味を考えながら名前や制度を設定していきました。

ファンタジー小説であって歴史小説とかではないからね。


今回はその中の名前に関して書いておきます。


まず、ブルーたちマヒンガという名称については、❶でも書いたように「マヒカン」というオオカミを意味する言語がモデルとなっています。

これは、モヒカン頭の語源として有名なモヒカン族(本来の発音はマヒカンが近いらしいです)の言葉でしたが、あまりにもその通りに書くのは良くない気がしたので、そこからひねって「マヒンガ」に変えました。

具体的に言うと、「Mahiingan」という表記からの変化です。

なので、マヒンガたちの習慣や描写は、モヒカン族と呼ばれた実際の人々とは関係ありません。


次に、ワタリガラスの一族。彼らの名前はだいぶぼかされていますが、構想の段階ではクロウ族をイメージしていました。

また、ワタリガラスの一族が登場する作中劇でサロッカとアビという人物が出てくるのですが、彼らの名前は「Absaroka」という単語を分解したものです。

これは、クロウ族の本来の言葉で「カラスの人々」を意味したそうなのですが、それについての詳しい資料を見つけ切ることが出来ず、あくまでもモデルということで、マヒンガと同じようにそこから架空の種族を作りました。

ですので、彼らもまた実際のクロウ族とは関係のない人々です。


このように、国も種族もモデルはあるのですが、その通りに書いていない人々が多いので、あくまでも架空のものであることが分かるようにしています。

そのため、先住民の血を少し引いているカチナ=ストローというネコ化の女性学者も、カチナという単語を避けて、カレン=ストロベリーにしてあります。


ブルーの家族の名前の変更も同じ理由でした。

ブルーの妹のマトワカ(本当はマトアカやマトワなのですが)。これは有名なアメリカ先住民ポカホンタスの正式な名前が由来でした。

そして、姉のローゼンという名前はアパッチ族の女戦士の名前でした。

そして、兄のゴヤクラもまた、アパッチ族の戦士として有名なジェロニモの別名をそのまま使用しています。


しかし、借りているのは名前だけで、マヒンガがポウハタン族やアパッチ族であるわけじゃありません。でも、この書き方だと雑に採用しているようにも思えるし、誤解を与えそうだと思うと、やっぱり気になって変えちゃいました。

その代わり、彼らの名前は不明のまま、人間として生きる者達から「ウェンディ、ウィニフレッド、ワット」と呼ばれているという形にしてみることに。

それと、彼ら自身はディネと自分たちを読んでいたという部分も、ディネだとアパッチ族やナバホ族そのままになってしまうため、ダイネという言語に変えました。


結局、モデルにしているのは変わらないわけだし、誤魔化しているだけにも思えなくもないのですが、そのまま採用するよりはマシにならないかなと思っての事です。

私自身はフィクションと現実は別物だと思っているのですが、全ての人がそうであるとは限らない。

とくに、他国の人たちや異文化の理解――それもマイノリティ側に関わる世界の扱いは、とても慎重にした方がいいと思っているため、このようになりました。


以前はもっとアイヌの言葉などを使ったりもしていたんですけれどね。これもまた心境の変化とうことで。


あ、ちなみに、私自身はこのあたりを全然気にしていない作品があってもとやかく言わないようにしています。

だって、それは作者さんの自由だし。私が自作で気を付けているのは、私自身の考えによるものだし……。

つまり、表現の自由のお話です。フィクションの世界でとくに文字や絵といった現実の人間に直接関わるわけじゃない媒体においては、基本的に自由は守られるべきだと。ゾーニングはした方がいいけれどね。


というわけで、今回は『Berry』の執筆におけるポリシーの紹介でした。

現在公開中のところで旧版を追い越すのですが、今後の読者の方の反応も楽しみです。楽しんでもらえるといいなぁ。