『世界史リブレット91 アメリカ史のなかの人種』山田史郎(2006年 山川出版社)

アメリカの歴史といえば頭に浮かぶのが人種差別に関するあれこれ。

この小冊子(リブレット)は、安価ながらそんなアメリカの差別の歴史が淡々と綴られており、とても参考になりました。

現代アメリカ人の中でも白人至上主義の思想が残っていたりするようですが、そういった人々の中にもよくよくチェックしてみると、黒人やアメリカ先住民の血が確認できることがあるという話をネット記事で読んだことがあります。


しかしながら、アメリカでは白人と非白人の混血を徹底的に防ごうとした歴史があり、このリブレットを読むと、非白人たちや混血児たちの歩んだ苦しみが静かに伝わってきました。

一部イスラム教の根強い地域では、男性が非ムスリムと結ばれることは許されても、女性が非ムスリムと結ばれることは許されないと紹介されているのを読んだことがありますが、かつてのアメリカにおいても、白人女性が非白人と結ばれることを処罰していた歴史があるようです。

一方で、白人男性が黒人奴隷の女性に子どもを産ませることは阻止しておらず、生まれた子どもは生まれながらに奴隷になっていたようです。


いずれにせよ、生まれた混血児たちの扱いに関しては、実に非情なものを感じました。


しかし、そんな時代の中でも、異人種間の恋を抱き、抗おうとした人々の記録もあります。真の愛を信じた人々は、白人にも非白人にもいて、彼らは人間としての当然の権利を求めてきました。

そうした一人一人の思いがまとまって、長きに渡る人種・混血児差別の体制を終わらせたのだと思うと、国というものは人々の想いがつくるものなのだという意識を強く感じました。